紫陽花柄の浴衣


20歳の頃呉服屋さんのショーウインドウに飾っていた浴衣が欲しかった。
紺地に大好きな紫陽花の浴衣だった。

その頃は、白地が主流の浴衣地だったので、紺地の浴衣はすごく目新しく欲しかった。
呉服屋さんの店先を通る度に、”素敵・・欲しいなぁ・・”と、ため息をついていた。

ある日意を決して、その呉服屋さんで憧れの浴衣地を買った。

しばらくして、そのお店の近くを車で通った時同じ浴衣を着ている人に出会った。

彼女は母親よりか少し年上の料理屋さんで働く、昔芸者さんをしている人だった。
小さい町だけに、そう言う事は私の耳にも入って知っていた。

大好きな浴衣が、その人と同じだったと言う事が少しショックだった。

数年経った時、彼女が勤務していた内科病棟に入院してきた。
もちろん彼女はそんな事をご存じ無いが、私は直ぐに彼女だ!って、解かった。

病名は”白血病”だった。

今では、白血病の患者さんは直ぐに医大に紹介して治療をお願いするが、その当時(もう20年位前)は
まだうちの病院で治療していた。

どういう治療をしたかは、ほとんど覚えていない。
その当時は太い輸血針を刺して、輸血をどんどんしていた事を覚えている。
それでも出血傾向の為、笑うと歯肉出血していて不気味だった。

夫はいなくて、息子さんだけいたが偉い人になっているらしくほんのたまにしかお見舞いに来る事が出来なかった。
それでも、とにかく明るい人だった。

そんな時、勤務交代になり私が一階下の整形病棟勤務になった。

それでも、彼女は散歩の途中私に会いに来てくれた。
慣れない病棟勤務の私を励ましてくれた。

整形病棟の勤務が慣れて来た頃、彼女はもう病棟に姿を見せなくなった。

内科病棟の看護師より息子さんも東京から来るのが間に合わず、一人息を引き取ったと聞いた。

長い看護師の経験の中でぼんやり覚えている、白血病患者さんの想い出です。
治療内容はぼんやりしていますが、彼女の事ははっきりと覚えています。

今も、同じ紫陽花の浴衣は私のタンスに締まってあります。
もちろん今でも大好きな浴衣です。

今は、彼女と同じ浴衣だったと言う事が偶然だったと思えない。



2004年7月18日






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